飛行機に乗っていると、搭乗が終わってドアが閉まったあと、機体が「後ろ向き」に動き始めることがあります。
実はこれは、飛行機自身がバックしているわけではありません。専用の車両を使って機体を後ろへ押し出す「プッシュバック」という作業が行われています。
今回は、飛行機が空港を出発するまでの舞台裏のひとつであるプッシュバックについて、初心者にも分かりやすく解説します。
1. 飛行機の「プッシュバック」って何?
飛行機は基本的に自分でバックできない
自動車ならギアをリバースに入れて後ろへ進めますが、旅客機は基本的に自動車のような方法でバックすることはできません。
そこで登場するのが、飛行機を後ろへ押し出すための専用車両です。
この作業をプッシュバック(Pushback)と呼びます。
つまり、飛行機が駐機場から出発するときに「後ろへ下がっている」ように見えるのは、実際には地上スタッフが機体を押して移動させているということです。
プッシュバックには専用の車両が使われる
プッシュバックには、一般的な車とは異なるトーイングカーなどの専用車両が使われます。
機体と車両を接続し、飛行機を安全な位置までゆっくりと後退させます。
空港で飛行機を見ていると、機体の前方に小さな車両が接続されていることがあります。これがプッシュバックを行う車両です。
大型旅客機になると、非常に大きな機体を動かすことになるため、専用の設備と地上スタッフによる慎重な作業が必要になります。
なぜわざわざ後ろへ押し出すの?
飛行機が駐機している場所は、基本的に機首を建物側へ向けた状態になっています。
そのままでは前方へ進むことができないため、まず機体を後ろへ押し出して、誘導路へ向かえる位置まで移動させます。
プッシュバックが終わると、飛行機は自力で地上を移動する「タキシング」へ移ります。
つまり、簡単にまとめると、
駐機場 → プッシュバック → タキシング → 離陸
という流れになります。
2. プッシュバックの豆知識
展望台から分かるプッシュバックの合図
空港の展望デッキから飛行機を眺めていると、プッシュバックが始まる前にいくつかの変化を見ることができます。
例えば、機体の周囲にいた地上スタッフが所定の位置へ移動したり、プッシュバックを担当する車両が機体に接続されたりします。
さらに、機体のエンジン始動など、出発に向けた準備が進んでいきます。
展望台から見ていると、こうした動きが「もうすぐこの飛行機が動き出す」というサインになります。
特に、トーイングトラクターが機体に接続され、周囲のスタッフが安全確認を行っている様子は分かりやすいポイントです。
普段は「飛行機が突然動き始めた」と感じるかもしれませんが、実際にはその前から地上では出発に向けた準備が進んでいます。
アンチコリジョンライトがついた後は飛行機後方の車両にも注意
飛行機の胴体には、赤色で点滅するアンチコリジョンライト(衝突防止灯)があります。
このライトは、周囲に対して「航空機が作動中である」ことなどを知らせる役割があります。
特にエンジン始動後など、航空機が動き出す可能性が高くなるタイミングでは、この赤いライトが点灯・点滅していることを確認できます。
ここで注目したいのが、飛行機の後方にいる車両です。
航空機がエンジンを始動して動き出す状態になると、ジェットエンジンの排気やプロペラなどによる危険があるため、機体後方への車両や人の立ち入り・通行には厳しい制限が設けられます。
そのため、展望台から見ていると、アンチコリジョンライトが点灯したあとに、機体周辺の車両が離れていく様子を見ることがあります。
これは単なる「作業が終わったから車が移動した」ということではありません。
航空機がエンジンを作動させ、これから動き出すための安全確保として行われている重要な動きです。
実はプッシュバックには「翼端監視」もある
大型旅客機のプッシュバックで特に重要なのが、翼端の監視です。
旅客機は胴体だけでも大きいですが、左右には非常に長い主翼があります。
そのため、機体を後退させるときには、胴体周辺だけを見ていれば安全というわけではありません。
左右の翼端が、駐機中の別の航空機や車両、建物などに接触しないかを確認する必要があります。
そこで、プッシュバック作業では翼端監視を担当するスタッフが配置されることがあります。
翼端の近くに立って周囲を確認し、機体との距離や障害物の有無などを監視します。
操縦席からは、左右の翼端付近を直接確認することが難しい場合があります。
だからこそ、地上にいるスタッフが実際の目線で機体周辺を確認することが重要になります。
展望台から飛行機を見ていると、機体の左右にスタッフが歩いていることがあります。
次に空港へ行ったときは、ぜひこの「翼端を見ているスタッフ」にも注目してみてください。
飛行機を安全に動かすためには、コックピットだけではなく、機体の周囲にも多くの人が配置されていることが分かります。
3. プッシュバックを見ると飛行機がもっと面白くなる
実は空港にはたくさんの仕事がある
飛行機に乗ると、パイロットや客室乗務員に目が行きがちです。
しかし、飛行機が安全に出発するためには、地上スタッフ、整備士、運航を支えるスタッフ、管制官など、さまざまな人たちが関わっています。
プッシュバックは、そんな「空港の舞台裏」を身近に感じられる作業のひとつです。
次に飛行機へ乗ったら注目してみよう
次に飛行機へ乗る機会があれば、搭乗してドアが閉まったあとに少しだけ周囲を観察してみてください。
機体が後ろへ動き始めたら、それがプッシュバックです。
窓側の席なら、機体の前方に専用車両が見えることもあります。
普段なら「飛行機が動き始めた」と思うだけの瞬間も、「今プッシュバックしているんだ」と知っているだけで、空港での時間が少し面白くなります。
プッシュバックの次には何が起きる?
プッシュバックが終わった飛行機は、そのまま離陸するわけではありません。
タキシングをしながら誘導路を進み、管制官から指示を受け、滑走路へ向かいます。
その間にも、パイロットや地上スタッフ、管制官などによるさまざまな確認や連携が行われています。
飛行機が空港を出発するまでには、私たち乗客からは見えない多くの「舞台裏」があるのです。
9aeroでは今後、「タキシングとは何なのか」「パイロットと管制官は何を話しているのか」「飛行機は離陸前に何を確認しているのか」など、飛行機の出発にまつわる舞台裏も紹介していきます。
飛行機に乗るとき、いつもとは少し違った視点で空港を眺めてみてはいかがでしょうか。


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